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谷中の夕暮れ 3


浅草右の写真は、いささか滑稽だが、正月元旦、浅草寺にピア・ミュラー=タム博士と初詣に出かけたとき、長い時間を待ちに待って、次は寺内に上がれるというグループになった時のものだ。若いお巡りさん(曽根史郎だったか、「若いお巡りさん」を唄っていたのは。も〜しもし、ベンチでささやくお〜二人さん、は〜やくお帰り、日ぃも暮ぅれ〜る〜。野暮な説教するんじゃないがぁ、ここらは近頃ぶっそうだ、話〜のお続きも、あ〜したにし〜たら〜、そろそろ広場の灯も消えるぅ〜。という歌だった。昭和31年のヒット曲、私が青戸小学校に入学した年だ。)が、斯様な看板を持って立っていた。

 先ほど「正月三賀日」というブログを載せてから、あらためて自分のブログを見てみたら、12月初旬にちょぼちょぼと書いてから、年末までブログを書いていない。案の定アクセス数もぐっと減り、12月は毎日30〜40人程度、これではお客が逃げてしまう。せっせと真面目なことを書かねば。

 言い訳がましいが、12月はとても余裕がなかった。27日から展覧会の展示作業が始まるので、それまでに済ませなければならない要件がいくつも重なった。

 まず雑誌「PEN」の原稿。1月15日発売号で今回開催の展覧会情報に沿ってクレーの記事を掲載してくれるので、11月末にベルンまで取材旅行に同行したことはたぶん以前に書いたとおりだったが、記事を書かなければならなかった。私の記名原稿はほんの一部だったが、キュレイター林が書いた作品の解説や本文を推敲するのは私の役目、責任でもある。

 次に、Bunkamura「ピカソとクレーの生きた時代」展のための音声ガイドの原稿があった。おそらく40枚。名古屋でスタートした同展には名古屋仕様の音声ガイドがあったが、東京と名古屋ではいささかの温度差があり、また、東京展音声ガイドのナレーターは、J-ウェイブのチョー人気ナビゲーター秀島史香さんにお願いすることにしたので、私は褌を締め直してその執筆に当たった。原稿はしつこい箇所もあるが、評判は決して悪くはない。

 それが済むと、今度はブリヂストン美術館ホールでの「クレーの詩 クレーの音楽 Part2」の準備。友人のヴァイオリニスト小林クロードに頼んで、彼が主宰する「アンフィニ・サロンオーケストラ」の精鋭三人とトリオを組んでもらい、クレーの日記、手紙などからテキストを選び、朗読と音楽のプログラムを組んだ。曲はリヒャルト・シュトラウス、バッハ、ハイドン、モーツアルト、ベートーヴェン、シューマンなどの名曲アンソロジー。テキストとの組み合わせはなかなか苦心を伴い、それでも一応格好のつくプログラムを制作して、私は3日前からテキスト朗読の練習を始めたが、部分入れ歯の裏側が舌に触ってサ行がうまく読めず、かなり苦労をした。本番が12月23日だった。切符がなかなか売れず、友人知己を頼った。

 本当は12月19日が〆切だった『クレーの食卓』(講談社)の私の原稿は「クレーと市民社会」という実に真面目なもので、これは結局、茅場町のビジネスホテルに缶詰になって仕上げることにした。クリスマスイヴとクリスマス当日の二泊三日。吉野屋の牛丼で力を付け、書き上げてから自分へのご褒美でデニーズでステーキを食べた。45枚(食べたステーキではなく原稿の枚数だ)。

 最後に、『新訳 クレーの日記』(みすず書房)の編集協力ノート。優れた翻訳者(高橋文子)を得てようやく『クレーの日記』の、40年振りの新訳を出版することになったが、これも相当にプレッシャーがかかって一応書いてはみたものの、まだまだ合格点ではなく、推敲を重ねている最中だ。一両日中には仕上げないと本気で叱られる畏れがある。現実逃避のためにブログを書いている。

 『クレーの食卓』に載せる小文「クレーと市民社会」は、2年ほど前から頭のなかで漠然と考えていたテーマをこの機会に文書化(言語化)することを期したもので、出来の善し悪しはともかく、書きながらいろいろ新しいことに気付いた。将来、これを一冊の本にしてみたいと思った。かなり勉強しなければならない。第一、市民社会の定義が困難である。クレーが生きた時代、特に第一次世界大戦から第二次大戦までの10年間というもの、ヨーロッパ市民社会は多くの問題を内に抱えながらも、いやそれだからこそ論議が盛んだった。ホセ・オルテガは「私」と「私たち」という概念を使って個人と社会の諸問題を際だたせ興味深い問題提起をしている。

 ところで「若いお巡りさん」だが、私は冒頭で若いお巡りさんと書いたところ、その歌が頭の中で回りはじめた。小学校一年生の時だったが、よく忘れずに歌詞を覚えていたものだ。もののついでに2番、3番の歌詞をウェブで調べてみた。

1.もしもし ベンチでささやく お二人さん
  早くお帰り 日が暮れる
  野暮な説教 するんじゃないが
  ここらは近頃 物騒だ
  話の続きは 明日にしたら
  そろそろ広場の 灯も消える

2.もしもし 家出をしたのか 娘さん
  君の気持ちも 分かるけど
  くにじゃ父さん 母さん達が
  死ぬほど心配してるだろう
  送ってあげよう 任せておきな
  今なら間に合う 終列車

3.もしもし 景気はどうだい 納豆やさん
  今朝も一本 もらおうか
  君の元気な 呼び声きけば
  夜勤の疲れも 忘れるぜ
  卒業するまで へばらずやんな
  まもなく夜明けだ 日も昇る

4.もしもし タバコをください お嬢さん
  今日は非番の 日曜日
  職務尋問 警棒忘れ
  あなたとゆっくり 遊びたい
  鎌倉あたりは どうでしょうか
  浜辺のロマンス パトロ−ル

 世相というか、昔の歌は社会学的にみると実におもしろい。そういえば、一昨年の年末は「年忘れ!日本の歌」に夢中になりブログにそんなことばかり書いていた。「カスバの女」など出色だったが、この「若いお巡りさん」の歌詞も、分析していくといろいろなことが見えてくる。

 2番の「今なら間に合う 終列車」は泣かせる。戦後10年、上野公園の階段には傷痍軍人がまだたくさんいた。家出少年少女は、子どもの私の目にもすぐにそれと分かった。毎年盆暮れになると、父は東京土産がたくさん入った大きなバッグを担いで郷里の猪苗代に帰ったが、いつも父の後をついて、京成電車から国鉄の駅まで上野の地下道を足早に歩いた。さすがに『蛍の墓』に描かれているような浮浪児は、その頃には街から姿を消していたが、浮浪者(ホームレスピープル)はごろごろしていた。駅の周辺に、如何にもあか抜けない服装の、田舎から家出してきたばかりの少年少女がいたものだ。

 3番。納豆売りが当時とはいえ、学資の足しになったかどうかはきわめて疑問だ。作詞の曖昧さが残る。ただこの歌は警察官のプロモーション・ソングなので、朝も昼も、夜明け前の町もパトロールしていますよ、という意味で真冬の納豆売りの時間を書き込んだのであろう。私は小学校5年の冬休み、友達の店を手伝って納豆売りをやったことがある。まだ暗いうちに店まで行き、自転車の荷台に納豆を乗せて、公団住宅や都営住宅を売り歩いた。「納豆屋さん!」と声を掛けられると自転車を止め、カラシを付けるかどうか聞いて、ハイと言われれば納豆の筒を開いてカラシをへらで付けた。寒くはあったが楽しかった。

 4番の歌詞は現在ではいささか問題になるかもしれない。たばこ屋の看板娘に気があるのはわかるが、近年、警官が若い女性の家に押し入って事件を起こしたことがあった。稀な事件であったから警察官全体に及ぼすイメージが失墜してまことに気の毒なことでもあった。

 余談が過ぎたが、掲載した写真は上述のように、元旦、浅草寺に初詣に出かけた際、人の整理に当たっていた若いお巡りさんが平和な笑顔を見せていたので思わず携帯カメラに収めたものだ。ヘラルド・トリビューンのフロントページは毎日、四川大地震の後遺症に悩む家族、子供を失ったガザ地区の母親、アフガニスタンの少年兵、そんな写真ばかりだ。

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  • 2018.08.26 Sunday
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  • 2009/01/11 7:01 PM
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  • 2009/01/17 3:24 AM
ちょちょちょ(^^;
見せて見せてっていうからチャック開けてデロンって俺のイチモツ出して見せてあげたの! 女の子キャーキャー言いながらイチモツにスリスリしてソッコーでフ ェ ラ抜きしてくれたYO! ほど良いバキューム具合で即イキしちゃってもったいなかったけど、7萬もらったしま
  • さい8
  • 2009/01/21 11:49 PM
しょーすしょすしょすw
凄かったw お姉さんのテクは凄かったww 色んな事やってもらったんだけど、蟻の門渡り舐められた時は思わず大声出ちゃった(^^; 結局お姉さんにまかせてずっと寝てるだけだったのに、10萬もらえたーーー!!! というわけで10萬の軍資金を手にパチ行ったら見
  • びえぶ
  • 2009/01/23 6:29 PM
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  • 2009/02/08 1:26 AM
いやはや、本当に俺は素晴らしい人間です。
ハイレベルな人間ですいませんw 本当に俺はレベルが高い人ですww 童.貞ニートで底辺の生活を送っていた俺がたったの2年で貯金額2000万ですからねm(_ _)m 今は某高級マンションに住んでて、女にフェ-ラ.チオをさせる毎日です^^ いやぁ、勝ち組って気分良いで
  • ネ申
  • 2009/02/21 4:32 PM
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