<< 訂正 | main | 正月三賀日 >>

騎士と死と悪魔

Duerer

冬のやはらかな日射しは今日も西側の窓ガラスを照らしていた。

 

 実は三日ほど前から、西側の窓を日が照らす時間まで起きられないでいる。またしても時差なのだ。逆らわずに昼夜逆転の時間に従うことにした。

 

 デューラーの版画「騎士と死と悪魔」は私が二番目に好きな作品で、むかしハンブルク美術館で求めた精巧な複製画が、ここ20年あまり何度も引越を繰りかえした仕事場の何処へ行っても、机の正面(または脇)の壁に飾ってある。なぜデューラーのなかでこの作品が好きなのか(二番目にだが)、未だに私自身には判らない。もちろんその隣に、一番好きな「メランコリアI」がある。これは母親を思い出させるからだ。私の母親その人ではなく、母性といったものだ。ひょっとすると「騎士と死と悪魔」は父性への想いだろうか。

 

 フランクフルトのシュテーデル美術館を訪ねたのは、企業秘密だが、デューラーの版画展準備のためだった。版画素描部門の責任者ドクター・マルティン・ゾンナーベントは実に感じの好い研究者で、今回私は初めてお目にかかったが、なんというか、余計なことを言わなくても考えていることが良く通じる勘のいい人物だった。展覧会計画の話のあと、彼はわれわれを自室に招いてくれ、最近購入したというクレーのドローイング(1940年)を見せてくださった。作品は裸で額縁にも入れていない。紙の縁が折れ曲がっているのはクレーがわざわざ折ったためでダメージではないと、その道の人を私は気取って、ゾンナーベント博士に伝えた。

 

 いろいろな動機が重なって、私はデューラーの版画展、それも全作品展を企画したいと数年前から考えていた。だが全作品となると、小さなエンブレムのようなものまで含めて約300点に及び、全作品展の意味はあまりない。そこで、独立した版画作品として制作されたものから100余点ほどを選び、彼の創作時期を通して見られるような質の高い展示を考えることにした。

 

 日本でデューラー版画を展示してもはたして来場者はいるのだろうかと、シュテーデル側は心配したが、私に良い考えがあると返した。かつて当ブログで紹介したことのあるデューラーの『ネーデルラント旅日記』(岩波文庫青571-1 前川誠郎訳)が念頭にあった。同じく前川先生が訳されたデューラーの手紙や資料を拝読すると、デューラーという人物はお金にうるさく、且つ自己PRやプロモーションに周到であったことがうかがえる。つまり西暦1500年代のニュルンベルクに生きた《近代人》なのである。

 

 『ネーデルラント旅日記』は、年金の支給を時の神聖ローマ帝国新皇帝カルロス五世に誓願すべく、妻アグネスと侍女を伴ってはるばる(現在の)ベルギーまで旅をした際の出納帳なのだが、行く先々の有力者に版画を献呈し、自分の望みが叶えられるよう外堀を埋めている。マルティン・ルターが逮捕されたという誤報を信じて、突如「出納帳」に冗長な祈りを記述するなど、狡猾なエラスムス(フォン・ロッテルダム)と違ってどこかすっとこどっこいな面を覗かせ、まったく憎めない人物像を彷彿とさせる。

 

 デューラーはともかく天才だが、上述のエピソードなど、展覧会のレイアウトはネーデルラントへの旅を辿りながら、彼の人物像と時代背景を鑑賞のナビゲート役に使うというのが私のプラン(これも最重要企業機密だ)。ゾンナーベントは私の案にかなり興味を示した。

 

 キュレイター林が、午後、デザイナーの須貝重太を訪ねて長い打ち合わせをして帰ってきた。重太から『ぼういず伝説』というCDを貰ってきたらしく、事務所でガンガン聴いていた。

 

 ♪

 地球の上に朝がくりゃ〜ぁぁ〜、

 その裏側は夜だろぉぉ〜!

 

 なんのことはない、川田晴久とあきれたボーイズのライブ録音CDではないか。重太のスタジオでずっとこれを聞きながら仕事をしていて、すっかり気に入ってコピーを作ってもらったらしい。私もこれを聴きながら、ときどきケラケラ笑いながら、「デューラーとその時代」という企画書の真面目な文書を書いた。

 

 さて今年の大晦日は念願の「年忘れ!日本の歌」に行けるだろうか。


スポンサーサイト

  • 2019.09.14 Saturday
  • -
  • 04:25
  • -
  • -
  • by スポンサードリンク

コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
トラックバック
要するに寝てるだけでおk!
ユーイチの奴・・・最近やたらとバブリーだから怪しいと思ってたら・・・こんなウマイ事してやがったYOヽ(`Д´)ノ ただ稼ぐだけならまだしも、ヤりまくれるってどういう事だオイwwwww ついこないだ俺もヤってみたんだけど、パイをニギニギしながら騎乗位させて
  • 要旬
  • 2008/12/12 8:51 PM
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
  • -
  • 2008/12/20 3:11 PM
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
  • -
  • 2008/12/24 10:50 PM
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
  • -
  • 2008/12/31 6:40 PM
calendar
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930     
<< September 2019 >>
sponsored links
selected entries
archives
recent comment
recent trackback
recommend
links
profile
search this site.
others
mobile
qrcode
powered
無料ブログ作成サービス JUGEM