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台峯日乗 95

2015年12月から今まで記事を書かずにいた。書かずにいたのではなく書けずにいた(雑文を書くのは好きだが2006年以来325本の投稿をしてすっかり書く意欲が失せていた)のだが、久しぶりに記事を書く気になった。

 

長生きはするものだ、先週水曜日、金曜日そして今日(月曜日)の三日間、恵比寿ガーデンシネマに通った。イングマール・ベルイマン生誕100年記念映画祭。ボーッとして新宿湘南ラインで帰ってきたが気が付くと大船だった。まだ興奮している。

 

結局「野いちご」「処女の泉」「鏡の中にある如く」「叫びとささやき」「秋のソナタ」「ファニーとアレクサンデル」の6本を観た。ぜんぶ観たかったがとても体力が続かないだろうと思って諦めた。いちばん好きな作品は「魔笛」だが、残念ながら今回のプログラムには載らなかった。まあ、そんなに観たければ、TSUTAYAでDVDでも借りればよい。

 

ベルイマン体験で最も印象に残っていたのは「ファニーとアレクサンデル」だが、70年代末だと思っていたのが、映画は1982年制作で、ジジイの記憶はそんなものだろう、封切りで岩波ホールに観に行った。311分の長尺物で、もちろん当時も途中休憩時間があった。今日それを観たのが、休憩が15分しかなく、隣のビルへ駆け足でタバコを吸いに行って来るのが精一杯だった。これもジジイの記憶だから思い込みであろうが、岩波ホールで観た中で強烈な印象を受けたカットが、今日観たデジタル・リマスター版では削除されていた気がする。最後の場面で、死んだ男が、飛び出す絵本のような具合に床からウワッと起ち上がるカットなのだが、思い込み・思い入れ・思い過ごしだろうか?あの場面がショックで、あのときぼくはベルイマンを強く意識したのだったが・・・。それ以前に「ペルソナ」と「沈黙」は観ていたが難解でよく分からなかった。

 

北鎌倉から恵比寿に通って、映画を観ながらいろいろなことを考えた。と同時に、例によって泣いた、ぼくは泣き虫だから映画を観るといくらでも泣くが、泣けるような場面だから泣いたのではない。ベルイマンの、映画的言語に対峙する姿勢に泣いたのである。分かり難い云い方かも知れない、もっと分かり難く云えば、映画は本来、物語(ストーリー)は二義的な要素であって、映画的言語に向き合うことが一義的であるからだ。ベルイマンはそれを実現した数少ない映画人のひとりだ。初期の「野いちご」「処女の泉」はキルケゴール(を通奏低音とする作品)だが、「鏡の中にある如く」ではキルケゴールに加えて、更に「叫びとささやき」ではもっと明確に、言語批判(ヴィトゲンシュタイン)へと歩みをすすめる。「秋のソナタ」では直裁的に言語(ことば)そのものへと接近する。映画は、映画的言語である限りにおいて、映画的言語がその内面で「映画」を考えるメディアである。(もっと解り易い日本語が思いつかない)近年、物語(ストーリー)で泣かせる映画ばかりであるのは嘆かわしいことだ。

 

35年前、岩波ホールで観た「ファニーとアレクサンデル」がベルイマンを強く意識したときだったと上述したが、別の云い方をすれば、ぼくが「映画とは何か」を考えるきっかけでもあった。(余談だが「叫びとささやき」にカラヴァッジオの絵に模したカットが一瞬出てくる、あれはあのカットを使いたくて作った映画ではないのか?と勘ぐりたくもなり、厳しい云い方をすれば絵画的言語へ逃げている。もっとも、その後の映画(ベルイマンではなく)に名画カットが多く使われるようになった嚆矢として評価できないこともない)「ファニーとアレクサンデル」は哲学的テーマを離れベルイマンの映画的言語の集大成であるが、彼の全映画作品を通じて云えることは、スウェーデンを一歩も出なかったことであり、だからこそ偉大な映画人と云える。アンジェイ・ワイダにとってのポーランドと同様に。「ファニーとアレクサンデル」は劇場を支配する富裕な役者一家の物語だが、劇中に何度か云われる「この小さな世界で」という台詞はそれを意味するのであり、シェイクスピアなど古典劇は止めてストリンドベリの新作を取りあげようと話し合われる最後の場面はそれを如実に物語っている。

 

先々週の金曜日、下の娘がコペンハーゲンに発った。学校が始まるのは9月だから夏の間はヨーロッパを旅して回ると云って出掛けた。どうやら着いたその脚で、寄宿舎にも行かず、そのままスウェーデンの友だちのところに行ったらしい。イングマール・ベルイマンというスウェーデンの映画監督がいて、毎日のようにその人の映画を集中的に観ているんだよと伝えると「パパ、その人スウェーデンのお金(紙幣)になってる人だよ!」と返事が来た。


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  • 2018.08.26 Sunday
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